「かわいい」には、“愛らしい”や“深い愛情を感じる”、“小さくて美しい”という意味があり、こどもや動物などの小さいものや脆弱なもの、未成熟なものを愛(いつく)しむ言葉として使用されています。平安時代の『枕草子』では「うつくし」と表現され、日本における美的表現の一つとして古くから存在してきたことが分かります。
昨今の「かわいい」を取り巻く環境をみてみると、本来の意味の「かわいい」に加えて、「きもかわいい(きもちわるい+かわいい)」や「ぶさかわいい(ぶさいく+かわいい)」といった言葉が生まれています。これらの言葉で形容されるものは、万人に「かわいい」と同意を得ることが難しく、個人によって捉え方が異なりますが、あえて共通点を探してみるならば、秩序が崩れ未熟に見えることによって引き出される「かわいい」があるものと考えられます。
現在、「かわいい」は海外でもそのまま「kawaii」と表記され、日本文化の発信ツールとして産業的側面からも注目されています。産業媒体としての「かわいい」文化は一見、若者のポップカルチャー(大衆文化)と関わりが深く、これまでの「かわいい」とは異なるようにもみえますが、その要素一つ一つを見てみると、本来の意へ通じるものも感じられます。
やきもの世界に目を転じても、いろいろな「かわいい」を見つけることができます。本展では、小さく丸々とした風貌の小壺やモチーフがミニュチュア化された“これぞ「かわいい」”やきものから、“これって「かわいい」?”やきものまでを、当館所蔵品より紹介します。様々な「かわいい」とやきものの多様な造形をお楽しみいただければ幸いです。