色鍋島は、江戸期の佐賀・鍋島藩窯で、将軍家への献上品をはじめ、幕閣・公家・諸大名らへの贈答品、藩の城内で用いるために作られた最高級の色絵磁器で、熟練の優れた陶工たちを集め、徹底した分業体制のもとで厳正に管理し、精緻を極めた美しさと高い品格を目指したものでした。
その色鍋島の伝統を、明治期以降、今日まで継承してきたのが、藩政期に代々御用赤絵屋をつとめていた今泉今右衛門家です。その工芸技術は、重要無形文化財「色鍋島」の保持団体である色鍋島今右衛門技術保存会に受け継がれ、またその芸術性は、同時代的美感を加える独自の表現で色絵磁器の造形美を追求し、「吹墨」・「薄墨」・「吹重ね」などの技法で現代の色鍋島を創作した十三代今右衛門(1926-2001)や、「墨はじき」という伝統の白抜き技法をメインに、色鍋島の新たな造形的魅力を追求している当代・十四代今右衛門(1962- )の作品に見事に開花しています。
本展では、2014年に陶芸家としては史上最年少の51歳で国の重要無形文化財「色絵磁器」の保持者(人間国宝)に認定された十四代の最新作から、1989年に同じく人間国宝の認定を受けている十三代をはじめ、明治期以降に色鍋島の伝統美を保持・発展させてきた十代、十一代、十二代の歴代今右衛門の作品、さらには藩窯鍋島焼の精品まで、崇高なる色鍋島370年の造形美を紹介します。会場では、テーブルアートの第一人者・阪口恵子氏によるテーブルコーディネート展示も行います。